たかが帽子、ではないメッシュ地の黄色い帽子
一年生が1年間かぶることになっている交通安全帽、いわゆる黄色い帽子。4月から調布市では全員メッシュ地のものになりました。
議員になる前の年、汗かき、暑がりの息子が一年生で、この帽子を毎日かぶっていました。5月には気温が上がり、通気性のないポリエステル製の帽子をかぶって帰宅すると、汗が新しいランドセルにまで滝のように流れていました。「安全を守るため」という理由で、校庭で遊ぶ時にもかぶることになっていたので、大丈夫だろうかと心配していました。
ネット検索してみたら、同じことで悩んでいる汗かきっ子のお母さんを発見。同じメーカーのメッシュ地の帽子を使っていると書かれていました。さっそく学校に問い合わせ、学校の許可が下りたら購入したものを使っても良いことになりました。(学校の許可が必要なことには驚きましたが。)息子は、全然違う!と喜んでいました。
2019年の春、議員になり、建設委員会所属になりました。そこで、この帽子の予算は都市整備部の交通対策課が所管していることを知り、9月の決算審査時にメッシュ地と普通の2種類から選べるようにしてほしいと要望しました。(メッシュ地を好まない子どももいるだろうと思いましたので。)他の委員からの賛同も得られました。
通常でしたら、子どもから直接、または保護者を介して担任に伝わり、管理職に伝えられ、校長会などで教育委員会に伝わり、さらに交通対策課に伝えられ、予算化される、という流れになるのだと思います。その度に「必要に応じて」というフィルターにかけられるわけですから、奇跡でも起こらない限り予算化には至らないでしょう。私自身、2018年に教育プランの市民委員をしていたこともあり、教育委員会には伝えていたのですが、委員会での交通対策課の答弁は「教育からは、そのような要望は校長会でも上がってきていないと聞いている」というものでした。
目の前であり得ないほど汗をかいている息子や、帰り道、暑くて帽子を脱いでいる一年生の姿を見てはいたものの、議員という立場でこういうことを要望することが良いことなのか非常に迷いました。でも、暑がる一年生に、校長先生は「熱中症予防のために黄色い帽子をかぶりましょう」と指導されているとも聞いていたので、子どもの側に立つことにしました。
2020年の予算審査時に経過を確認した時には、まずは児童数が少ない小学校で試験的に両方を使ってもらって、アンケート調査を行うとの回答でした。タイミングが合わなかったので、実際の取り組み開始は2021年になりましたが、結果的にアンケートの回答ではメッシュ地の希望が多かったようで、この春からは全員メッシュ地になっていると思います。長い道のりでしたが、議員の立場で発言したことでようやく実現したのでした。
ところで、交通安全帽には調布市が導入しているハット型とキャップ型があること、ハット型は女の子用、キャップ型は男の子用という仕様で作られていることをご存じでしょうか。ハット型に小さなリボンがついているのは、女の子仕様ということです。調布市の小学校は名簿も混合ですし、帽子も男女で分けることはしていない。そのことは良かったなと思う反面、暑い夏も寒い冬もかぶるのだから、デザインも生地も自由に選ばせてほしいというのが率直な思いです。
帽子はこれ、ノートはこれ、筆箱はあれ、と決められることで子どもたち一人ひとりの個性がじわじわと締め付けられてはいないでしょうか。「こんな帽子、暑いよ」という声に耳を傾ける体制は学校にあるのでしょうか。憲法で保障されている自由と権利が学校でも(家庭でも)子どもたちに保障されているか。子どもの権利以前に、まずそのことから問う必要があるのかもしれません。
たかが帽子、されど帽子。メッシュ地の帽子になったことは良かったとは思いますが、議員が要望して実現するというプロセスには不満があります。私が求めているのは、「この帽子、暑すぎるよ」という子どもの声(=意見)が直接行政に届く仕組みです。大人が聞きたい、大人が喜ぶ立派な「意見」の発表の場を設定することだけが子どもの意見表明権の保障ではないのですから。特に、今の日本社会で子どもに保障していかなければならないのは、NOと言う権利だと思うのです。(注: 親として自戒を込めて言っています。)