調布市の個人情報漏洩問題について
市の職員が8通9回のメールで、市民の個人情報を外部に漏洩していたことが発覚しました。「市の窓口で連絡先を書くように言われたけれど、住所を書いていいのか一瞬迷った」という声もすでに聞こえてきます。市民からの信頼を大きく損ねる深刻な問題です。
個人情報保護
市が市民の個人情報を収集する時は、市民への公的サービス提供が目的です。例えば、何かの手当てを受け取るために名前や住所、口座番号などを市に提供することがありますね。しかし、「〇〇のために使います」との約束の上で収集するものですので、目的外のことに使うことは基本的に禁じられています。(本人の了承を得たり、法令で使っても良いと定められていたりすると認められることもあり、そういった例外は条例で定められています。)
情報公開請求
今回は、ある市民が情報公開請求を行った際、窓口で提出した請求書がそのまま外部に横流しされていました。「情報公開請求」とは何でしょうか。
通常の手続き
市の業務は市民のために行われているものです。そのため、市が所有している情報は、市民と市との共有財産だという考えにもとづき、市民から請求があればいつでも公開できるようになっています。手続きは市役所4階の総務課窓口でできます。申請書はこのようなイメージです。(画像は市HP掲載の申請書見本から作成。)
公開してほしい情報がはっきりしていれば、ピンポイントでその資料を指定して請求します。しかし、市がどのような資料を持っているか、請求時にはっきり分からないこともありますので、「〇〇に関連する資料一式」などと書いて請求をすることもできます。いずれにしても、所管課の職員がその場に来てくれます。そこで具体的に公開してもらいたい情報について相談をして確認をします。具体的なことが決まれば、所管課が2週間後までに準備し、準備できたことを請求者に連絡するために、右上に記入した連絡先(個人情報)を使うことになります。情報公開請求は誰でもできることですし、誰がやっても同じ情報が出てきます。同じものを請求したのに、Aさんだけ黒塗りされたものが出てくる、ということはありません。右上に記入する個人情報は、あくまでも連絡のためであり、公開される情報に影響を与えるものではありません。
市が外部から提供を受けた情報の場合
さて、市が持っている情報の中には、当然市が事業をおこなう中で関わっている外部組織から入手したものもあります。そういったものも、情報公開請求の対象になります。しかし、中には個人情報やその組織が持っているノウハウなどが含まれていることもあります。情報公開請求は市民の権利ですが、こういったケースでは他者(外部組織)の権利とぶつかるので、条例にしたがって一部を非公開にします。その際、市の方で黒塗りを施した資料を作成し、外部組織に「情報公開請求があったのでこのような形で公開しようと思いますが、良いでしょうか」と確認を取ります。相手先の外部組織にとって出してほしくない情報が含まれている場合は、外部組織は市に対して「意見書」を出すことができます。こうやって、双方の人権を守りながら、公開するべき情報を決定していきます。
単なる「ミス」とは思えない不可解さ
報道によると、情報公開請求をした市民は、「〇〇に関する資料一式」という形で資料請求を行っています。おそらく上記のような手順で所管課の職員と相談があったと思います。その後、職員はなぜか請求書そのものを請求者の住所やメールアドレスが記載されたままの形で外部組織に送っていたことが分かっています。これは、情報公開請求に対して市が踏む通常の手順には含まれていないことは明らかです。市長は「意図的ではなく、ミス」と強調していますが、仮にミスだとしても、何の目的で行われたことだったのかが明確になっていません。
また、職員の意識の希薄さが原因だったと市は弁解していますが、9回も同様のメール送信が行われていることに対して、課内で誰も気づかず、誰も指導しなかったのでしょうか。また、このメールを受け取った相手方の組織(国交省とNEXCO東日本、NEXCO西日本)の職員に常識程度の個人情報保護に対する意識があれば、普通なら「市民の個人情報が含まれていますよ!」と注意喚起があって然るべきかと思います。相手方にとってみても、不必要な個人情報を提供されても、扱いに非常に困ってしまうはずです。ところが、9回に渡り国交省からもNEXCOの二社からもそのような注意喚起はなく、市職員はこの「ミス」をくり返した…。どう考えても不自然です。
市民の信頼を損ねる深刻な問題
今回の事件が市民を恐怖に陥れている原因は、市民と市、そして外部組織の関係性にあります。現在、調布市民および調布市は、外環トンネル工事による陥没事故、巨大な3つの空洞に現れる地盤の損傷、数えきれないほどの家屋被害、振動騒音による健康被害などの被害者です。そして、国交省とNEXCO東日本は加害者です。そのような関係性の中で、自らも被害者であり、また市民と加害者の仲介役を果たすべき市が、「被害住民に寄り添う」とくり返し答弁しているにも関わらず、事業者と市の間で交わされている情報の公開を求めた市民の個人情報を、あろうことか加害者側に横流しにしていたのです。
「子どもが通う保育園について知りたいと思い、市が持っている情報の公開請求をしたら、自分が請求をしたことが保育園にバラされていた」
「市に出入りしている業者と市のやり取りについて知りたいと思って情報公開請求をしたら、自分が請求していることが相手業者にバラされていた」
今回起きたことは、こういうことです。このような街で市民が安心して暮らせるでしょうか。
この問題に、調布市および調布市議会はどう立ち向かうのか。皆さんが選んだ政治家たちがどう振る舞うのでしょうか。自浄作用が期待できるのであれば、この「ミス」が1回起きた時に解消していたでしょう。しかし、自浄作用は働かなかった。もはや、市民のチェック機能が働かなければ真の改善は期待できません。
11月30日(火)10時よりお昼ごろまで
個人情報漏洩問題について市長からの発言
その後、各会派から質疑
傍聴にいらしてください。