子宮頸がんから女性を守るために

今年の第二回定例会での一般質問を子宮頸がん予防をテーマに行い、HPVワクチンや検診、また性教育について取り上げました。市議会だよりや調布・生活者ネットワークの活動レポートでもその内容をご報告させていただいたところ、お嬢さまのHPVワクチン接種を控えている保護者の皆さまからお問合せや質問などが寄せられています。厚労省が積極的勧奨を控えている中での、さまざまな報道、また市からの個別通知など情報が錯綜しているため、迷われている方も少なくないことと思います。お問い合わせには個別にもお答えさせていただいていますが、今一度、私がどのような立場から、どのような情報に基づいてHPVワクチンについての発信をしているか、また子宮頸がんから女性を守るために私たちが知っておかなければならないことを、この場でお伝えしたいと思います。

厚労省は、HPVワクチンについて、定期接種としては異例の積極的勧奨を見合わせるという措置を取ってきました。それは、2013年に定期接種になる前の2010〜12年、緊急促進事業として接種が急速に進められた期間に、多くの少女が重篤な副反応に襲われる事例が相次いだためでした。

集団免疫を目的とした他のワクチンでもそうですが、ワクチンというものは万能ではありませんし、副反応も起きます。それはHPVワクチンも同じです。しかし、HPVワクチンでは人生を大きく左右する重篤な副反応が起きており、他のワクチンよりその割合が高いのですが、他のワクチンとは違って重篤な副反応が出た場合に国の救済制度がありません。

2013年前後に接種をして重篤な副反応が出た女性たちは、今20歳過ぎになっています。彼女たちは、ワクチンの効果を信じ、国の勧めにしたがって接種をした方たちです。しかし、接種後(HPVワクチンが原因と疑われる重篤な副反応の特徴の一つは、かなり時間を置いてから症状が出るため、本人も因果関係に気づきにくい)、両親の顔が急に分からなくなるほどの記憶障害、一度始まると何ヶ月も寝床を出られなくなるほどの全身の痛みを始め、数多くの症状に襲われました。接種から約8年が経つ今も普通の生活を送ることができず、苦しみ続けています。しかし治療法もなく、親の育て方の問題だ、心の問題だとかえって非難を受けたり、医師からはあらゆる診察を断られ、挙句の果てにはワクチン反対派とレッテルを貼られています。

このブログをお読みくださっている方には、ぜひ被害者の声も聞いていただきたいと思います。
https://www.hpv-yakugai.net/message/

私たちが求めるのは、子宮頚がん罹患率を下げ、死者数を減らすことです。その目的を果たすのに最も重要なのは、子宮頸がん検診です。新しいHPVワクチンのパンフレットでは分かりにくい記載になっていますが、ワクチンを接種しても定期的に検診を受けなければ子宮頚がんを防ぐことはできません。このワクチンは、数あるHPVウイルスのうちほんの一部への感染を防ぐものであり、対象とならない型も数多くありますし、永久に効くものでもないからです。

このあたりのことは、一般質問でも触れましたし、活動レポート133号でも概要をお伝えしていますので、ご一読ください。さまざまな立場からの情報発信があり、保護者の皆さまにはとても難しい判断が迫られています。接種を選ばれることは自由です。しかし、性教育が遅れている日本では、接種する少女たちがきちんと理解して判断することが難しいのが現実です。保護者の皆さまにも、HPVウイルスは性交により感染するものであること、9割以上は自然治癒すること、ワクチンには効果とリスクがあることなどをお伝えし、お嬢さまたちとも共有していただきたいと思いました。

また、子宮頚がん予防に必要なのは検診だということが、何よりも大切な情報です。くり返しになりますが、このワクチン接種を見送ったとしても、検診が子宮頚がんを予防する確実な方法です。調布市も受診を進めるために、21歳の女性に無料クーポンを提供しています。(https://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1625185773418/index.html)

上のパンフレットには、8割の女の子がHPVワクチンを接種しているというイギリスやオーストラリアの例が出ています。また、オーストラリアでは子宮頸がんの診断が下る例がかなり下がっているというニュースもあります。でも実は、オーストラリアと日本の違いはワクチン接種率だけではありません。子宮頸がん検診の受診率も日本より高いですし、一般質問の最後に触れているHPV検査を導入していることが、何よりも大きな要因だと思われます。海外で主流となりつつある、子宮頸がん検診(細胞診)とHPV検査の併用は、日本でも出雲市で導入していて、浸潤がんをほぼ撲滅しています。つまり、必ず受けなければならない子宮頸がん検診の時に、ついでにHPVウイルスにも感染していないかどうか調べ、感染していれば治療をすることで、子宮頸がんへの発展を防げるわけです。この細胞診とHPV検査の併用は、海外では主流となりつつあります。(HPV感染が子宮頸がんに発展するのには時間がかかるため、出雲市では併用検査の場合は、異常がなければ3年に1回の検診となっています。)

今年8月末にHPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟が「HPVワクチンの積極的勧奨の速やかな再開に関する要望」を厚生労働大臣などに提出し、厚労省はHPVワクチンの積極的勧奨を差し控える理由はないとの見解を示し、これから積極的勧奨が再開される見通しとなっています。しかし、この要望書は子宮頸がん罹患者の減少と検診との関係性はひと言も触れていません。また、積極的勧奨の再開が遅れると、準備しておいたワクチンの使用期限が切れて無駄になってしまうということが、再開を急ぐ理由の一つとして挙げられています。ワクチンの使用期限よりも、少女たちの健康の方が大切です。

産婦人科医の先生方もHPVワクチン接種を積極的に勧めていらっしゃる方が多いようですが、日本は子宮頸がん検診の受診率が低いことが大きな課題であることは、産婦人科医の先生方がよくご存知のことです。中には、HPVワクチン接種は勧めず、細胞診とHPV検査の併用を勧めている方もいらっしゃいます。ぜひ色々な情報をよく吟味していただき、ご納得の上、接種についてもお決めいただければと思います。そして、ワクチンを接種されたとしても、子宮頸がん予防には定期的な検診が不可欠であることをお嬢さまにお伝えください。

若い女性が抵抗を感じずに受けられる子宮頸がん検診のあり方について、もっと具体的な対策が必要だと思います。また、出雲市のようなHPV検査との併用を調布市にも求めています。子宮頸がん検診の受診率を上げるための取組みについても、ご提案をお待ちしています。