多摩地域の水道水が危ない!有機フッ素化合物PFASの人体への影響は?

横田基地の泡消火剤によるPFOS汚染の報道は、2018年12月にさかのぼります。その後、多摩地域の地下水汚染が次々と明らかになってきています。「安全な水とトイレを世界中に」はSDGsの目標6にも掲げられています。蛇口をひねればいつでも水が出る日本。でも、その水は安全でしょうか?私たちも身近な問題として考えなければなりません。

有機フッ素化合物(PFAS・パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)は、テフロン加工や衣類など撥水加工をしたものや泡消火剤、半導体の製造、プラスチック製の食器、化粧品、家具など幅広い製品に含まれる物質です。自然界でほとんど分解されず、体内に取り込まれると排泄されず蓄積しやすいため、「永遠の化学物質」と呼ばれます。

PFASは約5000種類あると言われており、代表的なものにPFOSやPFOAがあります。中でも毒性が強いPFOSは約10年前に使用禁止となっていましたが、PFOAは新たに毒性が確認され、2019年5月の国連で製造、使用の禁止が決議されました。しかし、これまでの製造、使用過程で水とともに地下に浸み込んだPFASは、自然界で分解されないため、時間をおいて人体に影響を及ぼし続けます。人の体には、水道水と農産物食品のほか、食品の包装や容器から入る可能性もあります。アメリカでは水道水の水源の汚染を知らずに飲み続けていた住民の血液から平均値の20倍のPFOAが検出され、潰瘍性大腸炎や腎臓ガンなどの病気の発症率が高くなっていると言います。多摩地域では豊かな地下水を水道水にブレンドしているため、他人事ではありません。

各国では水道水に含まれるPFOA/PFOSに対して目標値を設定し、日本も2020年2月、「令和元年度第2回水質基準逐次改正検討会」で暫定的にPFOA/PFOS合わせた目標値を50ng/Lに設定しました(1ナノグラムは10億分の1グラム)。これはイギリスやドイツと比較をしてもかなり厳しい数値でした(参考:各国目標値比較)が、今年2022年6月、バイデン政権下のアメリカはPFOS 0.02ng/L、PFOA 0.004ng/L、合わせて0.024/Lと、以前の基準値70ng/Lと比較して3000分の1という非常に厳しい基準まで上限を引き下げました。多摩地域でも水道水源井戸(水道水にブレンドされている地下水を汲み上げる井戸)の中に50ng/Lを超える数値が検出されているものがあり、今後さらに厳しい基準値を設定するなど、地下水汚染へのさらなる対策が求められます。

横田基地におけるPFOS汚染の報道後の日本の対応、そして調布市の現状についてまとめました。

2019年に入ってから環境省が行った全国調査では、調布市の民間の井戸が調査対象となりました。比較的高い数値が出る可能性がある地点を選んで測定が行われたとのことですが、その民間井戸からPFOA 153.0、PFOS 403.0、計556.0ng/Lという目標値をはるかに超える数値が検出され、報道を見た市民からは市への問合せが相次ぎました。民間の井戸ということで場所は明らかにされていませんが、おそらく泡消火剤が使用されていた施設の影響下にあるのではないかと思われます。(参考:2019年度【環境省】PFOS及びPFOA全国存在状況把握調査結果一覧)(なお、同地点で2021年3月に再調査を行った結果、PFOA 170.0、PFOS 120.0、計390.0ng/Lと、目標値を大きく上回ってはいるものの、PFOAのみ数値が大幅に下がりました。原因は分析中です。)

一方、地下水を水道水に利用している東京都は、都内浄水場での水質検査項目にPFOA/PFOS検査を追加し、結果の公表を始めています(参照:水道局HP)。調布市は、上石原配水所(36番)、深大寺配水所(35番)、仙川配水所(37番)の3ヶ所の配水所があります。それぞれに取水井戸があり、汲み上げた水は配水所内外にある給水所(78~80番)で多摩川や荒川の水とブレンドされ、蛇口から提供されています。現在、調布市の蛇口から出る水はおおよそ25%が地下水です。(地図は東京都HPより)

それぞれの配水所で計測されたPFOA/PFOSの値をまとめました。

上石原配水所 36 深大寺配水所 35 仙川配水所 37

取水井戸数
7本
(2本停止中、
1本はPFOSが原因)
9本 2本

特徴
配水所から出る水は地下水100%のためPFOA/PFOSの値が高く出る。配水所を出た後、給水所78で川の水とブレンドして調節。 2020年度から施設更新のため井戸の汲み上げ停止中
2019年 6月 19 <5 <5
2020年



2~3月 27 <5 <5
4~6月 原水 47
浄水 26
給水栓 9
停止中 <5
7~9月 原水 44
浄水 23
給水栓 10
停止中 <5
10~12月 原水 63
浄水 33
給水栓 17
停止中 <5
2021年



1~3月 原水 56
浄水 25
給水栓 15
停止中 <5
4~6月 原水 66
浄水 75
給水栓 38
4月に井戸を停止
停止中 <5
7~9月 原水 17
浄水 5
給水栓 <5
停止中 <5
10~12月 原水 16
浄水 5
給水栓 <5
停止中 <5
2022年 1~3月 原水 6
浄水 <5
給水栓 <5
停止中 <5

原水:各地域に点在する井戸から汲み上げた水を配水所に集めたもの
浄水:井戸水(原水)と川の水を混ぜたもの
給水栓:蛇口から出る水

調査結果から、上石原配水所で使用される井戸水から目標値を超えるPFASが検出されていたことが分かります。目標値が設定されてからは、川の水のブレンド率を高めるり、井戸からの取水を停止したりすることで蛇口から出る水のPFAS濃度は目標値以内にコントロールされていますが、それまでは知らずに飲み続けていたことになります。同じく高濃度のPFASが検出された府中市や国分寺市でNPOが実施した血液検査では、住民の血液から全国平均の1.5~2倍の数値が出ています。

ゆっくりとろ過されることで不純物が取り除かれ、またミネラルなどが溶け出して美味しい地下水になります。都内でありながら美味しい地下水が飲めることを誇りにしてきた多摩地域で、まさかその地下水が汚染されていたとは…。東京・生活者ネットワークはすぐに東京都に対して文書質問を行うとともに、汚染物質を除去するために汚染井戸からの取水を継続するように要望をしました。地域からも東京都に声を上げようと、2021年3月に調布市議会でも都に対応を求める意見書を提案しましたが、残念ながら否決されました。命に関わる問題とは言え、目に見えないため、課題認識を広めるには時間をかける必要があります。

この度、多摩地域の有機フッ素化合物(PFAS)汚染を明らかにする会が発足し、PFASの血中濃度調査が始まります。特に上石原配水所から配水される水を使用している地域の調布市民の方にはご協力いただきたいと思います(ページ下部にご自宅の水道水の水源配水所が分かる地図を掲載しています)。採血を希望される方は、チラシをご覧いただいて(クリックで拡大)お申込みください。私も上石原配水所の水の利用者の一人として申し込みます。

地下水を守ろう。命を守ろう。
美味しい地下水を安心して飲み続けよう!

20220807【最終】発足のつどい資料「採血希望者を募ります」チラシのサムネイル

調布市内の地域ごとの配水所マップ(クリックで拡大)
ピンクの線で囲まれた地域に住まわれている方は、特に調査にご協力いただけると幸いです。
chofu mapのサムネイル
(元の白地図はこちらでDLさせていただきました)