男女共同参画の進展と課題とは?~その②~

さて、武川さんのお話をうかがう中で興味深かったのは、女性の活躍推進を銘打ったマイナンバーカードへの旧氏記載に武川さんが関わっていらっしゃったということでした。

昨年の調布市議会第二回定例会でこの関連で印鑑条例の改正があり、反対をした経緯があったからです。条例改正の元となっている法改正は、マイナンバーカードに旧姓を記載できるようにすることで、結婚して姓が変わった後も旧姓のままで銀行での手続きが継続できるなど、姓が変わることによる不便さを解消することを目的としたものでした。

マイナンバー制度そのものに対しても異論がある立場ではありましたが、女性の活躍推進という観点から考えても、女性が男性から自立した存在として活躍するのに必要なのは選択制夫婦別姓制度であって、姓を変えても不便を感じなくて済むようにとの措置は、むしろ姓を変えることを肯定することになり、当事者が求める方向性を否定することに繋がると考えました。

そこで、この取り組みを進めることとした時の武川さんの思いについて質問をしたところ、以下のような回答を得ました。

2015年、第4次男女共同参画基本計画の検討の中で、通称使用についてどのように扱うべきか議論していたところ、直前に選択制夫婦別姓制度についての裁判の判決(夫婦同姓制度は合憲)が出て、裁判所が夫婦別姓については国会で議論するようにとの判断を下しました。ところが国会では、選択制夫婦別姓に対して根強い反対の声があったため、男女共同参画局は、通称使用だけは死守しなければという観点から、その不便さを軽減するためにマイナンバーカードへの旧氏記載を考えたということでした。

このお話を伺って、国会には国民の意識変化と相容れない、夫婦別姓に対する強い反発がある現実が伝わってきました。そのような政治家を相手に、マイナンバーカードの利用促進を盾に通称使用を守ろうとしたということなのでしょう。日本は、それほどに男女共同参画を進めることが難しい状況だということに愕然とする思いですが、すでに世界に後れを取っている日本の前線で取り組んでいる男女共同参画局の取り組みに今後も注目していきたいと思います。