世田谷区立桜丘中学校を視察しました
東村山・生活者ネットワークの白石えつ子市議会議員、品川・生活者ネットワークの田中さやか区議会議員と一緒に、世田谷の区立桜丘中学校の視察に行きました。副校長先生から「ご自由にどうぞ」とおっしゃっていただいた後、本当に自由に見学させていただきました。
今日は、浴衣の日。一部の先生方をはじめとして、希望する生徒は浴衣で、他の生徒は私服での登校日でした(普段は制服を着ているそうです)。16日に予定されているという花火は、夜の勉強教室の日のオマケの楽しみです。夜の勉強教室というのは、実は子ども食堂のこと。「子ども食堂って言うと、来にくかったりするでしょ」と西郷校長。先生の細やかな配慮を感じます。
校内はというと、まず校長室の外廊下の光景にびっくり。まずはハンモック。授業時間中も、生徒がゆらゆらしながらリラックスしていました。(生徒を写さないように撮影しているので写っていませんが、実際は10名くらいいました。)
地域から提供されたという3Dプリンター。これ以外にも、パソコンが置かれたテーブル、個人的に自習などができるテーブルなどがズラリと並んでいて、パソコンでゲームをしている生徒の隣りのテーブルでは難しそうな参考書を解いている生徒がいる…といったように、どのテーブルにも利用している生徒がいました。(注:授業時間中です。)
授業中とは思えないにぎやかな自由スペースの向かい側に、校長室があります。覗いてみてまたびっくり。生徒たちがお茶会を開いていました。ちゃんとソーサーや茶托も使っているところが微笑ましいです。(注1:授業時間中 注2:校長先生は不在)
校長室で充電しているのは、子供たちだけではなかったりして…
この廊下は、不登校の生徒や、その他さまざまな理由で教室を抜け出してきた生徒たちが自由に利用しているスペースです。校長室の前に置くことで、何かあった時には生徒たちが直接校長先生に教えてくれます。夜の勉強教室も、そんな子どもたちと校長先生との関わりの中から生まれたもののようです。
桜丘中学校は、中間試験や期末試験を廃止したことで有名な学校です。子どもたちの純粋な好奇心を応援する先生たちからは、もっと勉強したい生徒の意欲に応えるための教材が用意されています。(穴あけパンチまで…。)
教室にも色々な工夫が見られました。黒板はカーブしていて、端に座っている生徒からも見やすくなっています。ライトもついています。また、板書内容に集中できるように、黒板の空きスペースや左右の掲示板には何も掲示物を貼らないという、合理的配慮がなされています。
掲示物はすべて後ろの黒板に貼ってあります。置き勉もOKです。
各階の廊下の端には、PTAが協力して設置された冷水器があり、生徒たちは授業中でも自由に水を飲みに行っていました。集中力が切れた時に冷たい水を一口飲めたら、適度な気分転換になりますね。
これはトイレの掲示。「だれにでも失敗はあるよ。心配しないでね!」トイレでの失敗は、失敗の中でも最も深刻なものではないでしょうか。そんな失敗をしてトイレで一人悩む生徒にも、こんな温かいメッセージがあるんですね。
このメッセージは、学校中に浸透しているように思います。失敗誰にでもあるし、失敗した時に大切なのは、対処法を考えて行動に移すこと。その時に、人に助けを求めることだって大切な対処法の一つ。学校はそれを実践して学ぶところ。そんな風に、失敗を成長のチャンスだと肯定的にとらえ、うまくいかなかった時にそっと子どもたちに寄り添い支える、伴走者としての先生たちの関わりがこんなところにも表れています。
下駄箱は2人で1つ。理由は聞きませんでしたが、お隣りの友達への気遣いの気持ちも生まれそうです。靴を隠されることがあっても、気づいてもらえそうです。
最後になりましたが、こちらが西郷校長です。先生も浴衣姿です。1年生190人のうち90人が越境で通っている桜丘中学校。本当は2階の特別支援学級の子どもたちも、加配をつけて同じ教室の中で勉強させたいのだけれど、そればかりは今の制度の中では、校長でもできないんだ、とおっしゃっていました。多様な個性をもつ子どもたちが、自分の個性やその日の気分に合ったスタイルで、居心地よく生活をする空間を見事に作っていらっしゃると思いましたが、西郷校長が目指すインクルーシブ教育には、まだ手が届かないようです。
桜丘中学校には校則はありませんので、例えば、ほとんどの生徒が携帯電話を持っています。「持ってこさせて失敗させないと指導できないでしょ」と西郷校長。学校で禁止したところで、子どもたちの多くが携帯を所持します。しかし、禁止することで、先生方には子どもたちが家で何をしているのかが全く見えなくなってしまう。問題が起きた時に、「学校では禁止している」ということを理由に対応を放棄することがよくあるけれど、あれはおかしい。桜丘中学校では、子どもたちに正しい使い方を指導するために、あえて許可し、学校の責任の下で失敗するチャンスを保障しているということです。
これだけ自由だと秩序が乱れるのではないか?学級崩壊にならないか?とすぐに思うかもしれませんが、そのような状況はまったく見受けられませんでした。(隅々まで見学しましたが。)成績がトップクラスの生徒が教室を出て行くところを見かけました。授業が面白いか、面白くないかを生徒が判断できる自由さがあり、その判断を受け入れてもらえる大らかさがあります。中学校は、先輩後輩の関係をはじめとして、スカート丈や前髪の長さまで厳しい校則に縛られる…というイメージもありますが、桜丘中学校は、誰かが何か理由をつけて他の人の気持ちを縛ることのない、子どもたちの好奇心があちこちでキラキラしている素敵な学校でした。
でも、いじめはあるそうです。開口一番、初対面の私たちに「いじめはありますよ」と率直におっしゃる西郷校長でした。いじめ問題の解決は法律に基づいてすることにしていて、警察や弁護士も入れるそうです。とかく学校は治外法権的になりがちですが、世間一般のルールを学校にも適用する、とても合理的で健全な問題解決法だと思います。
この学校でもう一度中学生時代をやり直したいね、と話しながら帰ってきました。