【留保地⑦】不確かなこと

なぜ1年半以上も秘密にする必要があったのか?
これまでにも書いているように、2023年にFC東京から留保地に練習場を移転することについて「打診」があり、2025年6月には市に提案書の提出、そして2025年8月10日にスタジアムでの発表(練習場移転プロジェクト、調布市との包括連携協定について)がおこなわれ、その直後に市のHPで包括連携協定やFC東京からの提案書、「市の基本的な考え方」が次々と公表されました。

なぜここまで秘密裏にする必要があったのか?

この問いに対して2025年9月議会の一般質問で長友市長は、「秘匿性が強く難しい案件」であり、「特に土地の所有者である財務省への配慮が必要だった」と答弁しました。またこれまでの答弁で、行政経営部長からは、「FC東京における社内での検討・調整状況などを考慮する必要があったことや、用地取得に向けた財務省との協議を丁寧に進めていく必要性などを踏まえ、情報管理を行いながら協議・調整を行って」きたとの説明がされています。

FC東京は民間企業ですので、情報の扱いについては色々と制約が生じることもあるでしょう。とは言え、行政は情報公開、情報共有が原則ですし、協働で公共施設を整備するという計画ですので、協働のパートナーであるFC東京にもある程度歩み寄りは求めるべきです。

一方、市長も行政経営部長も財務省の存在に言及しています。留保地は財務省が保有しており、最終的に市は財務省からこの土地を取得(購入)することになります。取得するには、基本計画を提示し、財務省の国有財産関東地方審議会の審査を通過する必要があります。

答弁にあった「財務省との協議」が具体的に何を指すかは不明ですが、土地を購入するまでのプロセスを丁寧に進める必要があるのは当然でしょう。また、2008年の利用計画を作る際にも、財務省と東京都との協議会を立ち上げ、1年間相談に乗ってきてもらっていますので、今後、土地を購入するまで財務省には色々とお世話になる場面もあるでしょう。そういう意味で、財務省に対して何かしらの「配慮」をすることは不自然ではありません。

しかし、そうした財務省への配慮と、計画を市民にも議会にも内密に進めることは、全く別の問題のはずです。

財務省が秘密にするよう促したのか?
「なぜここまで秘密にしていたのか」という問いには、FC東京の事情だけでなく、「財務省もこの件については情報の取扱いに慎重になっている」という説明もありました。「市の基本的な考え方」の表紙上部に記載されている文言が、それを表しているとのことです。

(「調布基地跡地留保地の活用による施設整備に関する基本的な考え方」の表紙の画像の一部)

該当の場所を見ると、「※本考え方における国有地(留保地)の取得に関する調布市と財務省との協議等が未了であることから、当該国有地の取得は現時点では仮定です。」という記載があります。

土地の取得もまだなのに、この計画が決まったことであるかのように広まってはいけないので、財務省からこの文言を入れるように言われた。そのことからも分かるように、財務省も情報の取扱いには慎重になっていて、そのことが公表が遅れたことと関連があるという趣旨の説明がされてきました。

しかし、財務省に提出する市の基本計画は、当然市民参加のプロセスを踏んで作るものです。財務省が市民に秘密に進めるように促したとすると、どのような意図があるのか疑問です。そこで、財務省に問い合わせてみました。

「市の基本的な考え方」の公表前に、内容を確認した財務省は、内容が漠然としているにも関わらず、財務省からの用地取得を含む想定スケジュールが非常に明確に書かれていると感じたようです。(実際このスケジュールは、FC東京の提案書をほぼなぞった内容で、12月に策定された基本計画まで一度も変わっていません。)

(同「考え方」より)

土地を売る立場の財務省としては、これを見た市民が決定事項だと勘違いして誤解を招くといけないので、表紙にこの文言を書き入れた方が良いということになったようです。

つまり財務省の側に「市民に知られないように」という意図はなく、むしろ市民に正確な情報を伝えることを意識していたと言えます。そもそもこの「市の基本的な考え方」の公表が2025年8月ですので、財務省の助言にもとづいて記載されたこの文言をもって、2023年からの2年間、市とFC東京が秘密裏に協議を進めたことの理由にはなりません。

市民不在でこの計画を2年間も進めたことと、どのような「財務省への配慮」がどのように関係していたのか、いまだに分かりません。

この計画がとん挫したら?
もう一つの不確かなこともまた、財務省とかかわっています。

留保地の活用には、土地の購入、運動施設や公園の整備、完成後の維持管理など、相当な経費がかかります。整備までで、例えば100億円といった、小中学校の校舎が2つくらい建てられるくらいの規模の事業になるかも知れません。市単独での実現が難しかったことは確かです。

もし、今回のFC東京との協働開発がうまくいかなかったらどうなるのか?という疑問について、市議会内では「財務省が民間に売り渡してしまう」という噂があります。調布飛行場等対策特別委員会では、ある委員からこの趣旨の質問があり、「(この計画がとん挫したら)市の利用計画の実現は難しくなる。財務省は(留保地を)民間に売ることも認められている」という答弁でした。

この答弁は正しく、FC東京からの出資も期待される今回の計画がとん挫すれば、市単独での開発になるので、それは財政的に厳しく、実現が難しくなる可能性は高いです。また「財務省は留保地を民間に得ることも認められている」も事実なのですが、財務省に詳しく聞いてみたところ、例えば「市の意向を無視して、財務省が高くで買ってくれる民間に勝手に売り渡してしまう」ということにはならないことがわかりました。

先にも書いたように、財務省は留保地を「その自治体に使ってもらう」というスタンスでいます。そのため、財務省としてこの土地を活用する意図も、またこの土地を利用して収入を得る意図もありません。あくまでも調布市にどのように使いたいかを主体的に考えて基本計画を立ててくださいということで、基本計画を待っています。

もし調布市が2008年利用計画は実現が難しいから諦める、ということになれば、計画を修正するなり、新しい計画を作り直すなりして、調布市で実現可能な別の使い道を考え直すことになり、財務省はひたすら待ちます。その時に、「やっぱりここは民間利用にしよう」と調布市が主体的に決めれば、調布市の都市計画や地区計画といった網掛け(市としてここの地域をどういう目的で使いたいか、という市の方針)にしたがって財務省が入札にかけるそうです。調布市が東京都に働きかけ、資金面の援助を受けながら一緒に活用する道を模索しても良いそうです。もし公園整備の経費が財政的に厳しいのであれば、土地を購入して、今の森林をそのまま保全する計画に転換しても良いそうです。

いずれにしても、どこまでも調布市の主体性が尊重されます。今の計画がとん挫したからと言って、財務省が留保地を召し上げ、市も市民もまったく求めていない目的で、留保地を収入源にするために民間に売り渡すということはあり得ないのです。なぜ、上記のような噂がまことしやかに議会内でも広がり、またそれを行政も明確に否定しないのでしょうか。

調布市が市民の意見を丁寧に聞き、多角的に検討すれば、色々な選択肢があり得るのではないでしょうか。しかし、市はそうしたプロセスを経ず、2008年利用計画に反映された市民の思いさえ反故にして、FC東京の打診に飛びついてしまいました。この計画の問題の一つは、市にまったく主体性がないことだとも言えるでしょう。