なぜ問責決議案に反対したのか?
表題について、手っ取り早く知りたい方は、活動レポート148号の2ページをご覧ください。
ーーーーーーーーーー
タブレット端末の使用に関する件について
公の場で説明する機会がなかったことについて
第一回定例会中に起きた、タブレット端末の使用に関する問題については、適宜、SNSを通じて情報や私自身の考えを発信してきました。また、定例会最終日には、当該議員とその会派幹事長に対する責任を問う問責決議案が議員提出議案として提案され、賛否の態度を表明する立場にいる議員の中では、私だけが反対を表明するという形で、今回の問題とそれに対する議会の対応に姿勢を示してきました。
しかし、この件に関する議会内の話し合いは、前半は幹事長会議という会派の代表者(幹事長)が集う会議で行われました。私もそこでは発言しましたが、非公開のため録画などをご覧いただくことができません。また、議会運営委員会では一人会派であるという理由で発言が認められませんでした。さらに、調布市議会では議員提出議案については討論が省略されるため、きちんと公の場で説明することができませんでした。
先日、議長へのはがきで、なぜ私だけが問責決議案に反対したのか知りたいというお問い合わせがありました。もっともなご意見だと思います。調布市議会基本条例には、議員は市民の皆さんへの説明責任を負うと書かれています。そのため、本来ならば、議員提出議案も含め、議場で議員が態度表明するものについては、賛否が分かれる場合には討論をするべきだと議会改革の中でも提案してきていますが、これまでの議会改革の中では議論の対象にも取り上げられませんでした。こうしたお声が寄せられたことからも、他の多くの議会と同様に、議員提出議案についても討論をするべきだということを、今後の議会改革でも引き続き訴えていきたいと思います。
SideBooksというアプリの使用状況について
今回のタブレット端末の使用にかかわる問題については、まず議員が使用しているタブレットが何に使われているのか、問題の対象となったアプリがどのようなものかなど、いくらかご理解いただく必要があると思っています。長くなりますがお付き合いください。
議員へのタブレット端末貸与の大きな目的は、ペーパーレス化です。その中でも大きな役割を担っているのが、問題の対象となったアプリSideBooksで、タブレットを導入している多くの議会で使われています。開くといくつものフォルダがあり、その中にさまざまな資料が格納されています。
格納する主体は、行政の各部署と議会事務局で、格納される資料に個人情報は含まれません。実は、行政がもっている皆さんの個人情報は、議員だからと言って伝えられることは絶対にありません。逆に、議会が持っている個人情報は、陳情者の方のお名前や連絡先になりますが、これが行政側に伝えられることはなく、SideBooksに格納される時には消してから格納されます。よって、SideBooks内の資料を議員以外の誰かが見たからといって、市民の個人情報が漏洩することはありません。
どのような資料が格納されているのか?
個人情報は含まれるのか?
現在、SideBooksには次の9つのフォルダがあります。
①本会議資料:本会議の議案や議案の参考資料、招集通知や陳情文書など
ほとんどが市議会のHPで公表されています。公開されないものも情報公開請求でご覧いただけます。公開されないものには、例えば招集通知があります。「●月●日に市長から通知があったので、◯月◯日に集まってください」といった議員宛の連絡です。
②委員会に関するもの:各委員会の日程や資料、招集通知など
こちらも本会議資料と同じで、委員会を傍聴していただく上で参考にしていただきたい資料など、市議会HPに公開されているものもあります。
③幹事長会議に関するもの
幹事長会議の議題と招集通知、話し合いに必要な資料など
④専決処分書
議会の議決が必要なものは地方自治法で定められていますが、緊急性があるなど、やむを得ない理由がある場合などに限り、首長の一任で処理することが認められています。このことを専決処分と言い、幹事長会議で説明、報告を受けて了承することがたまにあります。その報告資料が格納されます。HPでも公開されます。
⑤その他会議:議会報告実行委員会や議員会の資料
⑥議員連絡用フォルダ:その名の通りですが、ほとんど使われていません
⑦市議会関係
市議会のルールや政務活動費に関する資料、議員名簿、議員研修の資料など
⑧市政関係資料
行政の各計画や報告書など(HPで公開)、情報提供資料、議案説明資料など。
⑨タブレットのマニュアル
SideBooks内は、この①〜⑨のフォルダで構成されています。上記の中で「情報提供資料」や「議案説明資料」はHPで公開されていません。前者は、主にイベント開催の案内など、各部署が必要だと思った情報に関するもので、市民の皆さんからの問い合わせに議員が対応できるように、との配慮で提供されているものです。「議案説明資料」は、定例会の前に補正予算や条例改正について、説明を受ける時に使う資料です。議案審査をする上で、議案を理解するのに役立ちます。いずれも情報公開請求で開示されます。
かつてはすべて紙で提供されていましたので、日々提供される紙の資料で本棚もデスクの上もいっぱいになっていました。ペーパーレス化のためにタブレットが導入され、格段に紙が減りました。
こうして見ていただくと、くり返しになりますが、誰に見ていただいても問題ないものばかりだということがお分かりいただけると思います。行政も議会も、どちらも市民の皆さんのために仕事をしている立場ですので、関わる情報は、個人情報を除いて、当事者である市民の皆さんには公開されることが前提です。現に、幹事長会議で私が議会事務局に確認した時には、タブレットの所有者以外の人に見られて困るような情報はSideBooksには格納されていない、という回答でした。格納している側がそう答弁しているのですから、確かなことです。
一方、議員は「タブレットの使用基準」というものを渡されており、「使用者はタブレット、会議システム、アプリのパスワードを適正に管理しなければならない」と書かれています。常識的に考えても、IDやパスワードを他人に教えることは不適切だということは明らかであり、この点では当該議員の行動は改めなければならないものです。
ーーーーーーーーーーーー
問責決議案に反対した理由は、議論のプロセス
では、なぜ私が問責決議案に反対したのか?ということですが、大きな理由はプロセスです。そのプロセスを知っていただくために、時系列で事件が起きてからの議会内の対応について、私が記憶・記録している範囲、また聞き及んでいる範囲でまとめました。
3月12日:本会議中
当該議員の名前でタブレット上にSideBooks内の資料共有を知らせるメッセージが表示されました(SideBooksにそういう機能があります。ちなみに私は気づきませんでした)。当該議員はタブレットを操作していなかったため、第三者からの不正アクセスが疑われると議会事務局が判断し、当該議員のパスワードを変更。当該議員の会派で確認したところ、IDとパスワードを教えていた元議員がアクセスしていたことが明らかになりました。
3月13日:幹事長会議(非公開)
12日に起きたことや事務局の対応についての報告、当該議員と所属会派幹事長からの説明と謝罪がありました。各幹事長からは、背景などについて色々な質問や意見がありました。
会の最後には、議長や副議長が一任されて判断できるものではなく、今後どうするかは、みんなで話し合っていこうとの議長の意向が示され、幹事長が合意して会を閉じました。
3月21日:幹事長会議(非公開)
この間、1週間以上ありましたが、予算審査の委員会が連日開催されていたこともあり、この件についてさらに事実確認をしたり、議会としてのしかるべき対応について話し合う場はありませんでした。しかし、この日の幹事長会議では、議長が警察に事件相談に行ったとの報告が冒頭でありました。議長、副議長に一任するのではなく、話し合っていくという方向性が示されたというのが私の認識でしたので、大きな違和感を覚えました。
私からは、今回の案件をきっかけに、より良いタブレットの活用を目指すために、次の4点を提案、確認しました。
①議会としての事実確認をおこなう
②タブレットの使用基準をあらためて議会内で確認して共通理解を図る
③SideBooks内の資料について質問し、個人情報は含まれず、第三者が見て困るものはないことを議会事務局が答弁
④都議会でもSideBooksを使用しているが、議員をサポートする政務調査会などのチームには、本会議の資料などを閲覧できるアカウントが提供されていることを紹介し、議員活動を活発化させるためにも、議員のサポートチームがある場合は登録してもらい、 SideBooks内の資料の一部を閲覧できるようにすることを提案
この時点で③については共通理解を得られませんでした。中には、議員だけに特別に提供された情報で、誰にも見せてはならないという認識の幹事長もいました。④については、都議会は都議会であって、調布市議会とは関係がない、という意見が出ていました。
いずれにしても、当事者の議員の謝罪の言葉などが非公開の会議体で示されていましたので、公開の場で議論を進めることとなり、議会運営委員会に議論の場を移すことで合意しました。最後に、警察に問い合わせをしている内容を確認しようと議長に質問しましたが回答はなく、今後の議会運営委員会で明らかにするのか?と質問しましたが、これにも回答がないまま会議が閉じられました。
ここまでの幹事長会議では、会派の意見は出されたものの、何かを判断し決定するような議論の積み重ねはなかった、というのが私の認識です。しかし、この幹事長会議が終わった後に、幹事長会議の中では全く話し合われなかった問責決議案の話が突如出てきました。問責とは文字通り「責任を問う」ということですが、首長に対する問責決議とは異なり、議員に対するものには法的拘束力がありません。「どう責任を取るのか?」について、当該議員と幹事長に判断を委ねることになります。事実確認や議論を積み重ねないまま、責任を問うということの意義が私には理解できませんでした。「議会は何をやっているのだ」と市民から問い合わせがあるから、何もやらないわけにはいかない」「最終日に間に合わせるには、その前の議会運営委員会で議題に上げる必要があるので急がなければならない」という説明を受けていましたが、それならば、幹事長会議でしっかりと議論をするべきだったと思います。
IDとパスワードを教えたことは言語道断です。当該議員が失った信頼を取り戻すには、これからの議会活動で多くの努力が求められるでしょうし、選挙の時には民意を問うことにもなります。一方、市民の皆さんに実害はないということも事実です。また、控え室が近いこともあり、当該議員の議会内での活動を見る機会が度々あった私は、より丁寧に、真摯に議案審査に取組みたいという思いで、大先輩である元議員に相談し、また自身も過去の関連議事録に目を通して勉強する議員としての姿勢には、見習うべきところが多いと思っていました。そのため、そうした熱心な議員活動の中で起きた今回のミスに対して、どこまで議会として「責任」を問うことが適切なのかは、もっと議論するべきだと考えていました。そして、議会内の議論を深めるよりも前に警察に相談したり、問題の所在を議会としてどう考えるのか議論を尽くす前に問責決議をするということが、当該議員を必要以上に追い詰めることになるのではないかと危惧するとともに、議論を通して合意形成を図る場である議会が踏むプロセスとしても問題があると考えました。
そこで、問責決議案が提案される前に、議長と議会運営委員長に申し入れをしました。
3月25日:議会運営委員会
改めて公開の場で議論することとなったため、当該議員と幹事長からは、改めて謝罪の言葉が述べられ、この間も反省の思いに変わりはないとの言葉がありました。また当該幹事長は、市議会内で起きたことなので、市議会の判断が第一だ、と発言しており、市議会の判断に委ねる姿勢を示しています。その後、各委員からもいくつか質疑や意見はありましたが、議論を深めて市議会としての判断を見定めるというよりは、それぞれに意見を述べたという印象を受けました。(議会中継でご覧いただけます。)
話し合いの場を初めて公開の場に移しましたので、私は、当然、それまでの幹事長会議での話し合いを議会運営委員会でなぞるのだと思っていました。現に、冒頭で当該議員と幹事長は2度目の謝罪表明を求められたわけです。幹事長会議において、他の幹事長とは異なる見解や視点を示していた私は、一人会派とは言え、発言の機会をいただけるだろうと思っていたところ、最初から「一人会派の方は発言していただかなくて結構です」と委員長発言があり、最後に発言の機会を求めましたが、叶いませんでした。
委員会閉会後でしたので、録画中継には残っていませんが、「一人会派は発言できないんだよ!」「それが議会のルールなんだよ!」と怒号が飛び、目の前で聞かれた傍聴者が大変驚かれ、ご心配いただきました。調布市議会のルールでは、議会運営委員会では、委員長の指名があれば、一人会派も意見を述べることができることになっています。多様な意見を出し合って合議を諮るどころか、多数とは異なる意見をもっていることを分かっていて発言の機会を与えないという委員会のあり方もまた、多様な意見を出し合って合議を諮るべき議会が踏むプロセスとして問題ありと考え、問責決議案に反対する根拠となりました。
通信では文字数に限界があり、すべてを説明することができませんでしたが、議長へのはがきをいただいたことをきっかけに、まずはブログで説明責任を果たすことにしました。実は、幹事長会議で「余計な発信をしないように」といった不規則発言も聞こえてきていましたので、議会内でのさまざまな影響を考えると、説明責任を果たすべきとの思いを行動に移すことができない場面も、正直ありました。しかし、やはり市民の皆さまに理解していただくために、議会基本条例に則ってきちんと説明することにしました。
この件については、まだ議会としての対応は終わっていません。二人会派となり、議会運営委員会でも発言権と議決権ができましたので、調布市議会の議会基本条例を体現できるよう、より良い議会運営に向けて取り組んでいきたいと思います。