泉南市の子どもの権利はすごい
大阪府泉南市を視察し、子どもの権利に関する条例について関係者から詳しくお話を伺いました。
泉南市では2012年に子どもの権利に関する条例を制定。条例に基づいた施策には、健康子ども部子ども政策課、行政経営部人権推進課、教育部人権国際教育課など複数の部署が関わっています。これらの部署は条例制定の段階からそれぞれ委員を出し、主体的に関わってきています。調布市の子ども条例もそうですが、条例を所管する部署だけが条文を意識した取組みをしていることが多い中、泉南市は市長部局、教育委員会のいずれもがこの条例を意識した施策を展開しているところが非常に注目すべき点の一つです。
条例の大きな特徴は、1. 子ども参加を大切にしている、2.「権利がある」と言うだけではなく仕組みについても記載、3.検証・公表のシステムの3つです。子どもの権利に関する取組みは保育園から中学校を対象としており、委員が取組みの効果を検証。さらに市民モニターの意見も得た上で委員が市長に報告、市長はそれを元に部長級管理職の本部会議にかけるという一連のシステムが条例を活用する意欲を継続させています。子どもたちが子どもの権利を学ぶ機会があるだけでなく、委員も研修を重ね、その年の取組みを振り返り、次年度への改善につなげます。
特に印象的だったのは、市民委員のお二人の報告でした。市民モニターも交えて意見交換をしたり、子どもの権利について学びながら市長に提出する報告書を作成されていますが、その報告書がとても充実しています(報告書はこちらこちらから)。コロナ禍、後回しにされてしまった子どもの声を改めて拾い、非常事態の中で子どもたちの思いがいかに抑圧されていたかを検証した年度もあります。調布市でもコロナ禍のマスク着用などについて、子どもの声を聞きながらクラスごとのルール作りができないか何度も提案しましたが、それはできないとの一点張りだったことを思い起こします。子どもの権利は市民目線の検証を受けつつ、教育にも生かされなければならないと改めて思います。
こども基本法ができ、子どもの権利条例の制定や子ども参加の取組みが広がりつつあります。しかし、いくら法律を作っても、条例を作っても、私たちが目標を共有し、実際の行政の取組みや日々の子どもへの対応を検証しなければ、子どもの権利への理解を深め、より良い実践に繋げることはできないと思います。泉南市はその仕組みまで条例に組み込んでいる、本気度が伝わってくる条例です。調布市の子ども条例も時代に合わせて改正をおこない、子どもの権利をしっかりと条文に明文化する必要性を訴えています。しかし単に条例を更新するだけでなく、活用できる条例にすることが重要であることを学んだ視察でした。