7/27生活者ネットPFAS集会〜調布からの報告

7月27日、生活者ネットワークの今後のPFAS問題に対する政策を固めていくための集会を開催しました。

まず、府中市と三鷹市でトリクロロエチレンが水道水源から検出された90年代、生活者ネットワークや市民団体と活動をともにされた、専門家の寺田良一氏より基調講演を伺いました。

大河原まさこ衆議院議員、岩永やす代都議会議員からそれぞれ活動報告があり、さらに汚染度が高い多摩地域の自治体の中から調布、武蔵野、立川、国分寺の生活者ネットワーク議員がそれぞれの現状と活動について報告しました。

以下、木下の報告部分について、当日の配布資料と発言内容を共有します。

***********

調布・生活者ネットワークの木下やすこです。調布市は、東は世田谷区に接し、多摩26市の中では南東に位置する自治体です。2020年、環境省の全国PFAS調査の結果、37地点で目標値50ngを超えていたことが毎日新聞で報道されました。その時、調布市の調査ポイントの数値がPFOA・PFOS合わせて556ngと発表された中で最高値だったため、市民の間で一気に関心と不安が高まりました。

その後、市内に3つある浄水場のうち上石原配水所の水源井戸の汚染度が高いことがわかり、現在も井戸2本は取水を止めている状況です。水質データの表は、井戸水を浄化処理した浄水と、川の水をブレンドした後の給水、いわゆる蛇口の水の数値を表したものです。見ますと、おそらく2019年に目標値が定められる以前から給水、つまり蛇口の水にも20、30ng、ひょっとするとさらに多くのPFASが含まれていたのではということが推測されます。

市民の間で不安の声と課題意識が高まり、市民団体が実施する血液検査に21名の市民が参加しました。資料のグラフは、多摩地域全域の血液検査の結果です。20ngのところに横線を引いています。これは、アメリカで設定されている健康影響指針の数字で、主要な7つのPFASの合計が血液1mlあたり20ngを超えると健康への影響が懸念されるというラインを参考までに示しています。多摩地域全体に高めなのですが、調布市民の検査結果も、4つのPFASの数値を合計しただけでも平均値が21.9ngという結果になりました。

横田から遠いとは言え汚染度が高いエリアがあること、市民の健康にも影響を与えている可能性があるという中、地下水を使った食材を扱う飲食店や都市農業への影響も懸念されました。そこで、市内の地下水の汚染状況を明らかにしたいということで、調布市民も協力して、市内農業者や事業者が管理する井戸9カ所で調査を行いました。やはりいくつかの地点で50ngを超える結果が出ました。

この血液検査の結果を突きつけ、市が独自に地下水調査をするべきと議会でも求め、昨年9月に公立小中学校の防災井戸など市が管理する地下水30ヶ所と、希望のあった民間井戸を対象に、市が地下水調査をするための補正予算が計上されました。結果的に民間井戸は56ヶ所から手が挙がりましたので、合計86地点で地下水調査が実施されたことになります。また、昨年12月には都に対策を求める意見書が調布市議会で全会一致で可決しました。地下水のPFAS汚染問題は、そこに住むすべての住民が当事者である問題です。そうした当事者としての市民の声や市民活動で明らかになった実態を示すデータが行政や議会を動かしてきたと言えると思います。

しかし、調査をすればすぐに地下の状況や汚染源が明らかになるわけではない、地下水汚染の難しさも実感しているところです。最初に紹介した高濃度のPFASが検出された井戸は場所が非公開で分かりません。また、市民団体の調査と、市の独自調査で目標値を超える数値が出た地域が結構違っています。また横田基地を汚染源とする地下水からはPFOSが多く検出されるのに対し、調布市内で汚染度が高いところでは、PFOAの数値が高いため、横田基地とは別の汚染源が近くにあるのかもしれません。

今後は、府中市や狛江市など、近隣自治体の皆さんとも協力し合って市民活動として調査を進めること、またこうした調布市の独自調査の取組みを多摩地域を中心に広めていくこと、そしてそうした自治体での動きが東京都、国も動かしていけるよう取り組んでいきたいと思っています。以上、調布市について報告させていただきました。

20240727 調布市のPFAS汚染と対策についてのサムネイル

化学物質への対応で最も重要な要素の一つは「予防原則」であり、日本はこの視点が大きく欠けています。それはPFASに関しても同様であり、すでに欧米に大きく遅れを取っています。安心して地下水を活用できる環境を取り戻すために、水や土、空気がこれ以上人々の健康を損なうことがないよう、生活者ネットワークは活動初期からの水環境保全の政策理念を引き継ぎ、これからもPFAS問題に取り組んでいきます。