インクルーシブ学童を視察しました

調布市富士見町にあるゆずのき学童は、2020年にスタートした、重度の障がいがある子も利用できるインクルーシブ学童です。通常の学童でも障がい児を数名は受け入れていますが、ゆずのき学童は40人枠のうち15人が障がい児枠です。現在は、近隣の石原小学校の主に1~3年生と特別支援学校や特別支援学級の子どもたちが放課後時間を一緒に過ごしています。送迎バスがあるので、障がい児枠の子どもたちは、居住地域にかかわらず利用しています。

トイレは車椅子のままでも利用できるよう広く作ってある他、心身ともに落ち着くためのカームダウンルームや図書室など、色々な特性のある子どもたちが楽しく、安心して過ごせるよう工夫されています。

放課後は、子どもたちが障がいの有無を超えて交わることができる貴重な時間ですが、療育が受けられる放課後等デイサービスが急速に増えたことで、放課後時間にも子どもたちが障がいの有無で分断されることになりました。そのような中で調布市はゆずのき学童とスタートすることにしました。共生社会の基盤づくりとして意義のある取組みとして評価するとともに、単に同じ空間にいるインテグレーションに終わらないように、子どもたちが障がいの垣根を超えて一緒に活動できるインクルーシブな環境整備を求めていました。

2020年にスタートする頃は、障がい児枠で利用するお子さんたちの保護者からも心配の声があり、まずはパーテーションで子どもたちを分けて様子を見ながら…という慎重な姿勢でのスタートとなりました。4年経過した現在は、障がいの有無で分けることなく、おやつも活動も一緒に行っていました。スタート時は申し込みも少なかったようですが、今年度は受け入れ可能人数を超えた希望があったそうです。

子どもに障がいがある家庭の実態として、母親がケアに専念するため就労しにくいとか、離婚率が高くなるという傾向があります。そのため、ケアラーである母親の社会参加という視点からも、また安定した生活を送るという視点からも、重度の障がいがある子どもを受け入れる学童クラブの整備には隠れたニーズがありました。ずっと自分でケアをしていたお子さんを学童のスタッフに任せることには勇気と信頼が必要でしょうし、簡単ではないこともあると思います。でも、多くの希望があるということからは、子どもに障がいがあっても保護者が就労や社会参加に積極的になりつつあること、そして働きたい保護者が安心して子どもを託せていることが伺えます。(物価高騰で生活が厳しい実態も感じますが…でも必要な時に働ける環境があるということは大事なことです!)

よりケアが必要なお子さんにはマンツーマンでスタッフがつき、40人枠に対して学童の先生は12人以上で対応しています。視察中には、スタッフの皆さんが子どもたちに信頼され、慕われている様子も伝わってきました。

どんな障がいがあっても地域の学童で放課後時間を一緒に過ごすことができ、地域の学校で一緒に学ぶことができるインクルーシブな環境整備が共生社会の構築の基盤づくりであることを、ゆずのき学童から発信してほしいと思います。