なぜ飛ばせたのか~調布市自家用機墜落事故から7年~

7年前の7月26日、調布市の住宅街に自家用機が墜落し、お一人の市民の尊い命が奪われました。改めてご冥福をお祈り申し上げます。

亡くなられた方は、当時飼っていた愛犬を通して知り合った、いわゆる犬トモさんの姪御さんでした。近所には犬トモさんが何人もいて、当日は安否を確認しようと出先から何度も電話をかけたことを思い出します。

調布飛行場の使用は許可制ではなく届出制です。そのため、飛行機の整備やルールの遵守などはパイロットに委ねられています。慣熟飛行と偽って出された届出を東京都が受理したことで、事故を起こした自家用機は調布飛行場から飛び立ったわけですが、東京都はその是非を判断する立場にはなく、事故の責任を負う立場にはないとの司法判断が下されました。

また管理会社のエアロテック社については、刑事裁判で有罪が確定しました。しかし航空法違反だけで営業許可を取り消すことは難しいため、エアロテック社が事業計画に沿った運営をしているか、都が厳しくチェックして確認している状況です。亡くなったパイロットの会社のみが賠償責任を負うという結果に、ご遺族の落胆は想像に余るものがあります。都の報告によると、現在は、時間外飛行については、公共性のあるものなど飛行目的を限定している他、申請書にもとづく聞き取り調査を行い、業務内容と飛行ルートの矛盾内容がないか確認しているとのことです。

ブログ後半で特別委員会で確認された内容を報告していますが、事故を機に調布市民の安全を確保するための一定の取組みは進められています。しかし、時間の経過とともに事故の記憶は風化します。地元住民からは、なぜあの飛行機を飛ばせてしまったのか、その検証をしっかりと行わなければ、同様の事故がこれから先も起きるかも知れないと懸念する声が寄せられ続けています。いまだに都知事が被害者の元に謝罪訪問をしていないこともくり返し指摘されているところです。東京都にはさらに対応を求めていきます。

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6月18日に開かれた調布飛行場問題等特別委員会の内容を少しご紹介します。

<2019年7月25日の四者協>

◆都から示された対応
①管理運営の一層の適正化
②安全対策の強化
③万一の事故発生時の被害者支援の仕組み
外部の専門家が中立な立場からチェックする外部監査は評価できる取組みです。

◆調布市からの要望
①被害者の生活再建への寄り添いの継続
②常駐している自家用機の具体的な分散移転の推進、自家用機の撤廃
③万全な安全対策、管理運営の徹底、実効性の確保、市への情報提供、住民の不安解消と理解促進
④これまでの経過や事故について部局を跨いで共有し、引き継いでいくこと

<5月8日 諸課題検討委員会での確認事項>

①大島に格納庫を設置。給油施設の整備が入札不調で遅れている。今年3月には予算措置ができなかったが、5月中に予算を確保し、10月に工事着手、来年12月に竣工予定。
②自家用機団体と交渉中。給油施設完成の時点で移転を行う意向。
③時間外飛行について住民への情報提供を充実させる方向で対応を検討中。
④飛行ルートの遵守についてルールを再確認。
⑤騒音軽減のため、従来よりも早く高度を上げる取組みがされている。
⑥目視以外の方法での飛行ルートの把握については、客観的把握のための取り組みをしていく
⑦外部監査(年に1度)について、各市に情報提供をする
⑧都との情報共有の場が設定されていなかったので、定期的・適宜、諸課題検討協議会や担当者の打ち合わせを持つ
⑨調布飛行場に関する議会対応について、都も協力する

入札不調などありながらも、市の要求に対して具体的な取組みが検討され、少しずつですが進められてきていると感じます。分散移転には自家用機所有者との移転交渉も必要で、金銭的負担軽減や移転メリットの付与が課題とのことですが、取組みの継続を確認していきたいと思います。

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調布市は飛行場移転を強く求める立場から、継続の必要性に対して納得の姿勢を示す立場に転じた時期がありました。事故後は自家用機の分散移転が議論され対策が検討されていますが、これだけ人口が増えた街中から飛行機が飛び立ち、住宅の上を飛ぶことの是非についても考え続ける必要があるのではないでしょうか。


春も夏も秋も冬も愛犬と通った、飛行場に隣接する公園。
地域に衝撃が走った事故でした。
風化は許されません。